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読むだけでトラウマが解消されるストーリー -13- 北極圏の夏

〜わたしの歩んできた道  バックナンバーはこちらから〜

「これだー!」と思うと突っ走り、自分の心の声には逆らえない私。 

450ドルとスーツケース一つをもってKugluktukに戻りました。

日本を発つ前に彼には「Kugluktukには~の飛行機で戻る」と伝えていましたが

はたして彼が歓迎してくれるかどうかわかりませんでした。

ただただ戻りたい一心で飛行機に飛び乗りKuguluktukに戻ってきました。

とてもドキドキしながら空港に降り立ち、そこには彼が……

満面の笑みで立っていて、私を喜んで出迎えてくれました。

私は日本を飛び出してきたこと、そして少ししか手持ちのお金がないことを彼に告げましたが、彼は

「そんなの心配することはない。僕がしほりを食べさせてあげるよ」

と言ってくれ、戻ってきて本当によかったと私はほっと一安心しました。

観光ビザの期限は90日。

その間に何かしら私の進む方向もはっきりするだろうと

そのことは考えないでおくことにしました。

私がKugluktukに戻ったのは7月、夏の季節でした。

北極圏ならではの『白夜』が体験できます。

冬は6週間もの間太陽の出ない日がありますが

反対に夏は6週間太陽が沈まない日があります。

24時間お日様は沈まず空を360度ぐるっとひと回り。

本当に一日中明るいのです。

イヌイットたちは寒く長い冬が終わり

お日様がさんさんと輝き何もかもがキラキラするこの季節を心から楽しみにしていて

めいいっぱい夏を楽しみます。

じっとなんかしていられません。

毎日のようにボートや4輪駆動のバギーに乗って釣りやハンティングに出かけます。

村は北極海に面していて、その北極海に流れつく川がいくつもあるのですが

その川の側には村の人たちが自分たちで建てたキャビンがたくさんあります。

夏に長期の休みをとって村から離れキャビンで過ごす人たちがいます。

そこを拠点に釣りやハンティングに出かけるのです。

60~70年ほど前までは、イヌイットたちはまだ集落をつくらずにツンドラに点在しテントやキャビンの生活をしていました。

今のKugluktukのある場所には、教会と警察とトレーディングポストと呼ばれる店があるくらいで

イヌイットたちはキツネやオオカミの毛皮をとってきてはトレーディングポストに持って行き、タバコや食料、衣服などと交換していたのです。

その頃はまだみんなスノーモービルなど持っていませんでしたので、犬ぞりで移動をしていました。

多くの家族がいっせいにその場所にやってきて

冬には何十組もの犬ぞりを凍った北極海の湾に停めていたそうで

時間になったら鳴るサイレンの音を聞いて

その音に近い犬から順番に何百匹も犬が「ワオ~ン」と遠吠えする光景は圧巻だったそうです。

-14-につづく

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